■
私は小学校を3つ行った。
家の事情で、2度転校したのです。
私は、なかなか馴染めず、友だちもあまり出来なかった。
おまけに、時々ポカッと抜ける。
よく忘れ物をして、自分でも情けなかった。
2つ目の学校で、
3年生のあるとき、絵の具セットを忘れた。
(ああ、そういえば、きのう先生に言われたんやった。。)
先生は、忘れた子どもは、家に取りに帰れと言った。
家まで、砂利の坂道を20分ほど登らないといけない。
もう汗だくになった。
(絵の具、誰かに貸してもらったってええやないの…)
(そやけど、忘れたのは、自分…)
そんな気持ちが交錯していた。
家の玄関先に母が居た。
「どないしたん…?」
母の顔を見た瞬間、涙が溢れた。
わんわん わんわん 泣けて泣けて どうしようもなかった。
どうして母に出会って、急に泣けてくるのか
わたしには分からなかったけど、
母は、その辺りが分かっているような感じがした。
(おかあちゃんて、なんだかすごい──)
そんな風に思えて、ますます涙が止まらなくなった。。
*******
いま、母は80をとうに越し、
休み休みだけれども、家事を見事にこなしている。
私が体調わるいなどと伝え聞くと、すぐに、
花の絵手紙など送ってきて、励ましてくれる。
未だに、頭が上がらない、母です──。